詩集・人生の最中に/生田 稔
 
 さがせど見ず
 ただ朱色の布一切れ
 残されてあり
 さては美しき乙女なれど
 そをひろい 外にいづれば
 
 八月の末 涼しき風
 再び会うこともと
 長城を歩めり
 あすはいずこの宿にとも思いつつ
 歩き歩きにけり。  

 (2)


 果たしてや、数年過ぎ去れり
 男子ふと思う
 今日はあの乙女と、約せし日ならずや

 乙女と会いし長城いささか遠し
 彼馬に乗り
 やっと夕暮れごろ、長城の門に着けり
 門をくぐり、乙女に会わむと、急げり
 しばし進み行けば
 それらしきものあり
 戸あけて入れば
 絵のごとく.三年六月のそのまま
 乙
[次のページ]
戻る   Point(7)