さかな/芳賀梨花子
換えにある
受け止めるには まだ幼い息子を見ていると
ひいふうみいよおいつむうやあ
今日は何匹釣れるかなと聞くと
きっといい鱚がたくさん釣れるよ
もう夏だからねと答えてくれる祖父がいた
そう夏だ、夏だったんだ
だから、まいとし毎年この時分になると思い出す
あの頃は134号線なんて砂丘の中に埋もれていた
防砂林も今みたいに背が高くなくて
すべてが続いているそのさきに海があった
おじいちゃまは波打ち際の竿
向き合っているのはなんだったのかな
無心に投げている後姿に
声をかけることなんてできなかったな
子どもだからちっともわかっていなかったし
暮れかかる空が沖におちてゆく
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