狼よ、おれたちも敗走する!/んなこたーない
ーだったので、シフトを組むとき、なるべく電車が利用できる時間帯を選んでもらっていた。契約上、深夜のタクシー代は出るはずなのだが、ぼくは一度も利用したことがない。ある古参の社員によると、申請書を上司に出すときあからさまに嫌な顔をされるという話だった。
そのとき、重たい足を一歩一歩と進めながら、ぼくは焦燥感のとりこになっていた。仕事中ぼくらは大型デパートのなかに完全に拘束されているので、外界との接点を失っている状態にある。なので、勤務交代の際には、退勤するものが引継ぎの業務連絡を伝えるかわりに、出勤してきたものが外の世界の情報を雑談の形で伝えるというのが、暗黙のルールとして存在していた。
今日
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