自分は見た/んなこたーない
っていた。ぼくは男が死んでいるものと錯覚した。
「そんな所で死ぬなんて面白くないだろう」
すると男は便器の中から、意外にも健康そうな声で答えた。
「いいや、死なないから面白くないんです」
ぼくはこの男がフランク・ザッパのような顔をしているに違いないと思った。それはまったくの直観で、なぜそう思ったのかは自分自身でも分からなかった。そもそもぼくはフランク・ザッパの顔をうっすらとしか思い浮かべることが出来なかった。ぼくが便所を後にするときも、男は身じろぎひとつしなかった。
全裸にした後で、ピンクのストッキングだけ履くよう要求した。女はぼくに名前を言ったが、ぼくはそれを否定した。
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