自分は見た/んなこたーない
 


 ぼくがカメラのファインダーを覗くと、やはりカメラのファインダー越しにこちらを眺めているらしい彼の姿が目に映った。
 「預言者としてわたしが抱え込まざるをえなかった不幸というのは、人間という存在の根本的なところに根拠があるんだ。つまり、いやしくもきみが人間である以上は、やはりきみもわたしと同じように不幸な目に陥らざるをえないというわけなのだ」
 「それもあらかじめ決定済みなんですね」
 「ああ、きみはまだ二十代半ばだろう。そんな風にシニカルを気取るのはやめてくれないか。そういうのを見ると、どうも虫歯が疼いてくるんだ」

 激昂した彼女は、手にしていた花束でぼくの頬を思いきり張り
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