自分は見た/んなこたーない
 
張りつけた。八方に花びらが散って、辺りは強い花粉のにおいでむせ返りそうな程だった。
 「結婚生活だって、それはそれで素晴らしいものなのよ。あなたには分からないんでしょうけれど」
 ぼくがナポレオンならどうだろう。
 「一番の理想は、そうね、やっぱり退屈しないってことね。会話がなくても落ち着いていられる。気まずい雰囲気にならずにすむ。そういった幸福な関係は運命がわたしたちにあらかじめ与えてくれるわけではなくて、偶然に結びついた二人がお互いに努力して作り上げてゆくしかないものなのよ」
 いいえ、ぼくの前世はカメレオンだったんです。
 「嘲弄することは簡単よ。誰に対しても、何に対しても。もしも相手が真剣であれば、なおさらのことよ。でもそれって、最終的には自分自身を嘲弄することにしかならない。わたしはあのひとから学んだのは、そういったことなの」
 どうしてあなたはそんなに反社会的なことばかり言うのですか。

 全裸にした後で、ピンクのストッキングを頭から被るよう要求した。女は何か喋ったが、上手く聞き取ることが出来なかった。ぼくは女を無視して自作の詩を高らかに朗読し始めた。
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