春の告白/あおば
 
たマスクメロンが
2万円の札を誇らしげに下げて
お呼びでないと紫の衣を纏う
夕張メロンの安いのはないかと探したが
このブースには見かけない
落ち目になりたくないと痛感したが
プリンスメロンでは失礼かなと
隣の棚を見渡すと
苺がずらり勢揃い
1パック1000円を誇らしげに見せつける
先刻の580円がみすぼらしくなるほどで
お金の威力に頭が下がる
1000円の苺を2パック買って
日の当たる坂道をゆっくりと登っていったが
目当ての家は見つからない
住居表示のない街なので
誰かに道を聞かないと
どうしようもない
辺りを見回したところが
誰もいない
見知らぬよそ者を警
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