春の告白/あおば
 
を警戒して
外には顔を出さないようだ
GPSの車は迷わないで通り過ぎる
ケータイを持っていないから
問い合わせる手段もない
せめてタクシーでも通らないかと
見渡すが
この辺りは
よそ者は来ないのか
マイカーばかりが
悠々と走っている
自転車も来ない
途方に暮れて
元来た道をとぼとぼと戻る
駅に着けばなんとかなるかと
諦めないで歩く
向かい風が冷たくて
春の光が嘘のように思えるほど身体が冷える
孤独というものを
たっぷりと味わっているところに
見覚えのある顔が車の窓に映っている
迎えに探しに来てくれたのだと
喜んで大声を出したら
よく似ているけれど
赤の他人で怪訝な顔に強い警戒感が出ている
ケータイを持っているようだから
110番に連絡されそうな気がして
慌てて横町に逃げたら
駅へ行く道が分からなくなり
これからどうすればよいのか
分からなくなり
死にたくなった。



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