ゴッホとの対話〜オルセー美術館にて〜 /服部 剛
 
られた人物画の何気ない優しいまなざしと、その下
に掛けられた詩篇らしき言葉・・・僕が今迄に見たゴッホの絵の印
象よりは、明るい希望ある色調を奏でている絵であった。
 アルルのダンスホールの絵は、多くの人が波立つ海のように、瞳
を閉じて優雅に踊り、ホールの上にはいくつもの照明が光の玉のよ
うに浮かんでおり、その場にいるような臨場感を感じた。ゴッホの
絵を見るといつも感じるのは、「独りきりで立っている画家のまな
ざし」である。たくさんの人が夜を楽しむダンスホールでさえ、彼
は独りでそれを眺め、絵に描くしかないという哀しい宿命を、ゴッ
ホの絵を見る度に感じる。そこには言葉にならない寂寥
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