ゴッホとの対話〜オルセー美術館にて〜 /服部 剛
寂寥感と、絵を
描かずにいられない衝動と、目に写る見知らぬ人々さえも愛惜(いとお)しむ
「言葉の無い声」が、通低音のように額縁の中から聞こえて来る気
がする。
美術館を出た後、僕はガラスの壁から上野の街を見渡す公園内の
レストランに入り、数年前に古本屋で見つけた一九五一年の「荒地
詩集」を開き鮎川信夫の「詩人の条件」というエッセイを読んだ。
手にしたボールペンで印象に残る文の横に線を引くと、薄く赤茶け
た頁が切れそうな音が微かにする。
「 われわれを詩に駆り立てるものは 〜中略〜
われわれが生きている現実の生活の中にあるのだ 」
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