ゴッホとの対話〜オルセー美術館にて〜 /服部 剛
美術館に行く時、私は「一枚の絵画の中にある詩情」を探しに行
く。名画と言われる絵は、額縁に囲まれた世界から「音の無い声」
が何かを語っている気がする。今日見た絵でも、印象に残る絵は何
枚もあったが、例えばゴッホの住んでいた簡素な部屋の絵は、部屋
自体は傾いているような印象だが、後に悪化してゆく精神の症状を
表すような、 草原と雲が渦巻き、捩れた家が危うく建つ、歪みき
った情景を描いた時期より、まだ均衡を保っているように思えた。
木目の床に置かれた黄土色のベッド・明るい布団・傍らに置かれた
緑の座布団を敷いた木椅子・水色のドア・日の射す窓、そしてベッ
ド脇の壁に掛けられ
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