ゴッホとの対話〜オルセー美術館にて〜 /服部 剛
様々な人々の人生の想いが凝縮された場所なのであろう。
今日は上野公園内に入ると、アコーデオン弾きの女性が「ろくで
なし」を楽しそうに奏でているのを通行人が集まって聞いていた。
やはり上野は今も、昭和の匂いがする場所である。広い道をまばら
に歩く人々と、大きな木々の緑の上には、薄い雲の向こうにぼんや
りと光る太陽が西へと傾き始め、その情景を眺めているだけで、上
野公園の上に広がる空自体が一枚の絵画のように感じられた。上野
動物園を傍らに通り過ぎ、地下の広場へ階段を下りて東京都美術館
の入り口に入ると、平日であるにもかかわらず、館内は多くの人々
で賑わっていた。
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