( 空ノ声 )/服部 剛
の、冷えた空気に身を縮め、
ポケットに手をつっこんだ、私の影が、
日照りのアスファルトに揺れている。
立ち止まった影の前は教会の門。
ガラスの掲示板の内に貼られた一枚の紙。
「
坂を上ると、あの方を思い出す。
たったひとりで重荷を負って、
坂を上った、あの方を思い出す。
」
青空に、うっすら広がる真綿の雲に、
鐘の音が、ひびきわたってゆく。
門から去ると、
アスファルトに落ちた50円玉が、
日の光を反射していた。
屈んで穴を覗く。
「
ひとりの亀が
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