小詩集【レトロな猛毒】side.C/千波 一也
 
沈めない行方に誘われ続けて 
やわらかな枯渇に 
まぼろしを呼ぶ 
手慣れた眠りにさすらいながら 
六、調律 
小指はしずかにうつむいたまま 
二度とは 
乗せてもらえない背中の 
去ろうとはしない 
その無言 
あいまいな距離のなかで 
やさしい言葉が 
やわらかに 
燃えた 
ためらいの数は 
唇に映えて 
行き止まりには後ろ姿を 
あらわれるほど 
硝子は薄く 
冷たくて 
まだ見ていないすべての無色を 
嘘があふれる 
褪せて震えて頼りなく、鍵 
そこは 
どこにも
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