小詩集【擬人絵図】/千波 一也
 

もはや雪崩と呼べない


かすかな吐息
たよりない足音
あしたをさぐる腕

たとえばそんな営みに
じっと耳を傾ける静寂こそが
雪崩の呼び名に
ふさわしい


待つものごとがあっても無くても
待たれているということだけは
くつがえらない決まりごと


白紙のうえで白線は
はじめからえがかれている

気付かずにすむことがおそろしさ


すべてを押し流す激しい雪崩は
とうの昔にはじまりがある


まばたきの間にうつろうものなど
はかなきいのちのほかにはない

駈けてゆくものには
駈ける姿がみえやすく
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