小詩集【擬人絵図】/千波 一也
 

駈けない姿を
信じこむ

その失速を
雪崩はたしかに聴いている


終わりはすでに止まらない
はじまりのなかの
はじまりに




四、反旗


掲げられている、
無表情

ときおり
風につられて
わらいもするが
恥じらえもせず恥じらっている


そらへと挙げた小さな拳は
ささいなものほど
守りぬけるのに

もう、
ささいなものすら許さない


傷つかないためには
傷つけること

でもそれは
だれかにとって
やさしい語りになりうるだろうか


吹かれるだけの、
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