小詩集【擬人絵図】/千波 一也
 



放れるものはたくらみに長けすぎて
泣きたいきもちは
剥がされてゆく

拒んだなにかを埋め合わせるために
いのちを含んでは
さびしがる性

巻きつけた夜の深さを首にともして
毒牙はあてもなく逃げ惑う
みずからを狂わせて


やさしさはかけら、
握りしめている
かけら



歴史の、凝固



いつか髪ではなくなった眼光に
告げる言葉をまだ知らない

すくえなければ
すくわれないから
呪文を、漂流

一途な、
緊縛




三、雪崩


すべてを飲み込む激しい流れは

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