日記、メモ/由比良 倖
春の匂いが、頭の中を灼き尽くす。
2月14日(水)、
夜、ヘッドホンで古い音楽を聴きながら、花片だらけの闇の中で、僕は書く。
僕の頭の中には考えが不足していて、人生は分裂した森のようだ。いくつもの影が重なっている。魚も泳いでいる。綿雪が降ってくる。小さな、手のひらに乗るような稲妻が起きる。
ドレーキップの窓。直列4気筒エンジン。ひとり遊び用のカードゲーム専門店。電線、どこまでも続く電線、永遠に続く日本語が命に触れるまで。月の光が眼に宿った種類の人たちが、頭の中の砂利道をどこまでも歩いていく。
未明、もう少しで楽しくなれそうなのに、小さな病気を抱えているみたいな
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