「解放」の淋しい心地良さ/岡部淳太郎
 
 誰にでも、何かしら似たような経験があるかもしれない。何かが終って、それから解放されたように感じて、一抹の淋しさを感じながらも同時に湧き上がってくる妙な心地良さの感覚を。たとえば学校を卒業したとか、仕事を辞めたとか、恋人と別れたとか、そのような局面において、それらがそれまでの自分を規定していた、あるいはもっと言えば縛りつけていたもののように感じて、そこから離れることである種の解放の感覚を味わうようなことがある。そのような淋しさと、奇妙な心地良さ。
 二〇〇七年に「淋しい解放」という詩を書いた。「kader0d」という詩誌にゲスト参加の形で寄稿させてもらい、後に詩集『生の拾遺』(二〇一二年・七月堂
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