景観と思考/番田 
 
何も思うこともなく、生きようとしている。それは可能なのかと思ってみるが、意外と難しいことだと気づく。何も考えたり、思ったりもしないことは。人はどうしても行動するときに理由をつけようとする。それは自然なことではあるが、時として自然な行為ではなくなることがある。例えば、舞台の上では、自分が役者ではないということを考えることは必要ではなく、役になりきるということだけが彼自身に求められる。ただ、多くの人はそうではなく、役に没入することができる人はごくわずかな存在なのである。同じようなことが本の中でも言え、文章の世界の中では他の事柄について考えることはあまり必要ではない。つまり、役者であるということは、本と
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