夜に捧げる何か/道草次郎
 
その歳若い上司は、ぼくどころか妻よりもずっと若く、なんとその若さで現場のチーフを仰せつかっているとの事だった。
妻はつねづね、その上司が、制服の上から胸や腹のあたりを無造作にガリガリと掻きむしるのが堪らなくイヤだと言っていた。

妻がはじめに電話に出た時、すでに事態はいくらか滞っていた。

要するに妻はこの休業を終えて職場に復帰することをためらっており、反対に上司の方は復帰を望んでいるという図式だ。
しかし、上司が復帰を望むのは、それは辞められたらどうしても困るからというよりもヘルニアは治療可能であり、それを抱えながら職務に返り咲く人は五万といる。
だから、妻が復帰に消極的であるのは
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