夜に覚める/道草次郎
物音と話し声を聞いたとき、ぼくは布団の中いた。
ぼくは、しばらくじっとして、できるだけ注意深く外に耳を済ませることにした。
空耳ではないはずだった。
たしかに、微かな話し声と、横たえられた樹が地面を引き摺られる時に出すような音をちゃんと聞いたのだ。
ぼくは隣の部屋で寝ている妻の横顔を見た。その顔は月の光を浴び、白く、というよりも蒼白に見えた。
妻を起こさないように、そうっと起き出したぼくは窓とは反対側のキッチンへ行き、昼に少し飲んだきり急須の底にわずかだけ残っていた冷めたルイボスティーをコップに注いだ。
コップを持ってバスルームの鏡の前に立つと、薄明かりの中に自分の
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