空耳/そらの珊瑚
今年の梅雨明けは遅いですね、と話しかけられた気がして目を開けた。誰も私を見ていないし、ましてや狭いバスの中で他人に話しかけるなど、いまどきともするとちょっとした迷惑ととらがえがちな行動を取る人は少ないだろう。
そもそもバスには数人しか乗っておらず、隣を含め私の近くには誰も座っていない。
ピンポーン。
明確な降車の意思を示す青色のランプが点く。
次の停留所は「こつそうじあけのもんまえ」
機械がしゃべるその言葉が、なぜだか「ことしのつゆあけはおそいですね」と私の頭に変換されたのかもしれない。
こつそうじあけのもんまえに着く。山の中腹で木々の緑しか見えない場所だ。
こつ
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