レモンジュース・ダイアリー(2)/由比良 倖
2019年夜月28日(期末)
私は薬を飲まずに待っていた。昨日、隣のダクトでは、城井さんが、私のギターの最終工程に入っていて、もうあとは鳴らしてみるだけだよ、と言ってたので私は嬉しかった。
朝、シャワーを浴びて、一度ホールに出て、城井さんを訪ねたのだけれど、あいにくまだ寝ているらしくて、ノックをしてもしんとしていた。ホールの明かりは、まだ薄赤く、階上の川の音がいつもより大きく聞こえた。私はホールを横切って、黒い螺旋階段のある一角で、どこまでも続く渦巻きを見降ろして、見上げてから(たまに上か下で同じことをしているひとと目が合って、それは少し恥ずかしい)、ラウンジの方まで歩いていった。天井にある非
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