穴は穴ごと穴のまま/はるな
時間という途方もない罪のなかで、許されるとしたら何があるだろう。たとえば夜、わたしは座って往来を聞いている。電車の行き交う音とサイレン、携帯電話にむかって笑う若いひとの声、風。時折虫が、(蝉だろうか)、じりじりと何かにぶつかって落下するのも聞き取れる。そして寝息。二十七時半にひどくかすれて響いた「待った?」
わたしのある部分は、(それはもしかしたら穴と呼ばれるかもしれない)、失われてしまったと思います。そしてその部分は、言葉にするのがむずかしい何かとひきかえだったのではないかとも思う。わたしは、それが穴ならば、埋まるものだと考えていた。そもそものはじめから空いていた穴だとしても。でもそうでは
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