ちくちく/はるな
 

もうああいう風にはできないかなと言ったらそうなりそうなので口を閉じて笑った。友人は複雑な色合いの冬のコートを買った、よく似合っていた。
電車には、相変わらず知らない人がたくさんいる。知らないひとしかいない。眠りをたびたびはさんで日々が行くので記憶が一日ずつではない。断ち切れているしつながっている。
(断ち切れているしつながっている)
この家の(実家の)パソコンにはわたしのデータはほとんど残っていない。数枚写真があったそのうちの一枚に学生時代のわたしを友人が撮ったものがあった。床にうつぶせた裸のわたしの肩から上を写したものだ。それだけの写真だけどとても痛々しく素敵だった。わたしはきちんとそ
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