小さな視点(詩評)/アラガイs
 

「リンゴの味覚はリンゴそのものには無く、 リンゴ自体は味をもたない、 リンゴを食する者の口のなかにも無い、 両者の接触が必要である 」。
これはアルゼンチン出身の著名な作家で、また詩人でもあるボルヘスが、その著者「文学を語る」に於いてバークリー主教の書物から引用した一説である 。詩を書く者にとって、著者はあまりにも有名な人物なので、ご存じの方も多いはずだろう 。
われわれ人間にも動物にも舌による味覚は備わっている。つまりここに言われる一説には、観念としてリンゴそのものが美味しいもので、食べるに値するものであるか否かという前提条件が、われわれには必要とされているということを意味
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