取り替え子/影山影司
酔客の話は、とりとめのないことばかりだ。自身の酒の勢いも手伝って、話がどんどん流れていくように感じる。ある時、聞いた話を思い出そうにもうろ覚えで、またその話を聞いた相手もたまたま同席しただけの相手で……。すると、本当にその話を聞いたのか、夢だったのではないか、そんな気持ちにもなってくる。ひどい時には、自分が聞いた話なのか、自分が体験したのか……それすらもわからなくなってくる。年をとるとこういうことが多いらしいが、聞いた話だと指摘されると言葉を通じて自分が乗っ取られたような気にすらなる。
その正体を見極めようとすると、口内炎を舌で探るような、曖昧な作業になる。いつの間にか口の中に湧いた瘤を、不
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