取り替え子/影山影司
、不器用な舌先で突いて感じたところで気になるばかりで、意味などないのだ。
私が今から話すことも、そんな話のうちの一つだ。
その日、私が立ち寄った居酒屋はたまたま混んでいて、カウンター席に座ることとなった。すでに酔っていた私は、少し崩れて椅子に座り、適当なツマミと焼酎を頼んで飲んだ。隣を見ると、三十ほどのよく日焼けをしたワイシャツ姿の男。赤いネクタイを揺らしながら、串を横咥えしてハツを頬張っていた。
頼みすぎたツマミを、良ければどうですかと言ったのがきっかけだったと思う。私は隣の男に話しかけていた。昔っから、酒を飲むと食えないくせに、ツマミを並べるのが好きなのだ。
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