ファースト・エンカウンター/板谷みきょう
 
 うるさい位にジャズが、
大きく流れている薄暗がりの小さな喫茶店。
会話厳禁の中で、
三人はそれぞれに思いを馳せて黙りこくっていた。

十六才の僕は喫茶店と言えば
ホットを頼むのが礼儀なのだと思っていたし、
味も解らずただ熱いコーヒーに水を足し、
氷を入れて飲んでいた。
そして決まってその後、空になったコーヒーカップに
付いてきたミルクと砂糖を入れて、水に溶いて飲んでいた。

一方、ジャズの音が渦巻く中で目を閉じ、
髪を無造作に延ばして髭をたくわえた彼は、
音に心地よく抱かれていた。

この店の常連客の様で、
落ち着き払ったその姿は随分と大人に見えた。
いつの間
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