アイロン、アイロン台としわのあるシャツ/はるな
 

田舎のモーテルは都会のそれと比べものにならないくらい広い。(そして安い)。どことなく過剰装飾でふるくさい(でも清潔な)クロゼットやバスタブ、けばけばしい色の使い捨てのアメニティ。プレッサーとアイロンまであった。だからもちろんアイロン台も。


アイロン台。うちで、夫のシャツにアイロンをかけていると、自分が夫によって作られたもののような心持がする。それは不幸を包んだ幸福だ。あるいは―諦念に似た充足。
わたしの体を作ったのは夫なのだという気持ちになる。夫はわたしの体から少女をすっかり追い出してしまったのだ。ひとりの女の子の体から少女が去ってしまうと、それはまったくべつものの体になる。という
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