アイロン、アイロン台としわのあるシャツ/はるな
 
いうことは、わたしは身を持って知った。死ぬまで少女が居座り続ける体があることも、出て行った少女はそれでもときたま戻ってきて―望むと望まざるとにかかわらず―わたしにいくつかのことを思い出させようとすることも。

幼いころ、アイロン台は幸福なものに見えた。実家のそれはうすい緑色の布がはられていて―ぴん、と―針金のような足がついていた(折りたためるようになっている)。
母がアイロンを掛けるのを好んでよくみていた。しめった布のうえをなめらかにすべる鉄。アイロンそのものは旧式のとても重たいもので、この世のしわをすべて直すようにものものしくあった。その重たい―熱い―鉄のかたまりを、まるで自由にすべらす母
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