ロマネスクの果て/済谷川蛍
 
 僕は友達がいない。この世界で僕の存在を知る者はごく一握りということだ。果たして、これまで出逢ったごく一握りの人間のうち、僕の存在を思い返してくれる人はどれくらいいるのだろう。
 いつもの如く部屋で自問自答と妄想の日々を送っていた。そろそろ書きかけの小説『ロマネスクの果て』の続きを書かなければいけないという思いが脈絡もなく浮かび焦った。しかしどうしても続きが思い浮かばない…。もう8年ほどプロローグで止まっている。この小説が完成したとき、きっと自分は生き別れの魂と出逢えるのだと思った。そして、この小説を長編として完成させることが出来れば、自分は特別な存在になれると信じていた。

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