みんな眠ってしまった/はるな
 

夜。アデルを聞いている。アデルはかつとくんが教えてくれた。アデルを教えてくれて、そのあとわたしたちは結婚した。
このアパートには若い夫婦が多い(わたしたちを含めて)。生まれたばかりみたいに見えるちいさな子どもたちも。でも夜、どんなに耳をすませてみても、夜泣きの声はきこえない。ときおり、ざりざりとか、ぎるぎるとか、よくわからない虫の声が聞こえてくる。でもそれも、風がすっかりつめたくなって、どこかへ行ってしまった。
みんな眠ってしまった。

すてきなものはみんな男の子から教えてもらった。
今はもうたまにしか聞かなくなったロックンロールも。
わたしは時折、なにが自分のものかわからなくなっ
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