長いおかわり/花形新次
その日僕とミョギーは診察が終わると、駅前の定食屋で昼飯を一緒に食べることにした。鎌倉駅前は平日でも観光客で混雑していた。店にいく途中、ミョギーはいつもより静かだった。思いつめているようにも見えた。しかし、僕は何も言わなかった。それが二人の流儀だった。12時ちょっと前だったが、店のほとんどの席はもう埋まっていた。運良く歩道に面した窓側の二人がけの席があいていた。僕とミョギーはその席に座った。お下げ髪の恐らくは40代後半の女性がお冷を持ってきた。僕はお下げ髪を呼び止め、早速注文した。
「塩サバ定食ひとつ。」
それを聞いたミョギーは俯いたままボソリと呟いた。
「塩サバには早過ぎる。」
そして、お
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