「荒地」を読むための諸前提 1/るか
 
「荒地」を読むための諸前提 1

 「親愛なるX…」。こうした書き出しで始まる、荒地派のマニフェスト
とも申すべき「Xへの献辞」は、1951年版の「荒地詩集」の巻頭に
付されています。「現代は荒地である」、こうした時代認識が断定的に
くりかえされます。「荒地」とは、直接には、イギリスのモダニストで
あり、カトリック詩人であった、T.S.エリオットの詩集のタイトルから
借り受けたものですね。鮎川信夫は早大在学中にエリオットを翻訳し、
また卒業論文のテーマに選びました。現在の感覚で荒地の詩集を紐解け
ば、その語彙の「暗さ」が、まずは読者をして読み進めるこ
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