『しろう』-永遠未完小説-/しろう
 


第0章/Plologe


ここに大きな湖がある。

僕の小舟はエンジンが故障していて動かず、
かといって櫂があるわけもなく、桟橋に繋げられたままだ。
きみの船は好調な化石燃料エンジンを積んでいて、
岸辺の街を往復したり周回したりしながら、
時を折れば、僕の小舟とすれ違う。
ここでアインシュタインの特殊相対性理論を導入してみるとしよう。
僕の小舟の動きは大きくとも湖の水面の揺れ程度。
素早く動き回っているきみの船よりも、
相対的に、時が速く流れていることになる。
ゆえに、
出会いも別れもまた時折で、
同じ時が重なることは有り得ないとい
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