埋め込まれるもの/番田 
 
今も思い出されるあの日、私は夢見ていたハワイで楽しいディナークルーズに参加することができた。怪しい熱帯樹林の繁る真夜中に訪れたシンガポールでは、美しい夕暮れをぼんやりと見ることができた。そんな気のしているような窓の外を今日も何も無い日本の景色が流れて行く。何も差し出されることも無いままの外は真っ暗な夜となっているけれど、そこは景色の美しい観光地である場合もあるのかもしれない。なんとなく目的地へと進んで行くだけの寂しい寝台車の客室にもたれかかっているだけのようにも思えてくるー。ニューヨークのメトロの中で見たものは世界の中における人間たちにとっての現実の厳しさだった。ハーレムではバスケットシューズを履
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