埋め込まれるもの/番田
を履いた子供や大人たちが群れとなって客車の中に乗り込んできた。無愛想な顔をした地下鉄の車両が急ブレーキをかけていくつもの駅に停車したものだ。…思い出すとそんな気がしている。例えば南フランスのマルセイユでは予約していたはずのホテルを探しながら必死でトランクを引きずったものだ。結局ホテルは見つからずに素敵な金髪の少女の家に連れ去られた。そんな気がするこの家の窓の中に巡る風景は、一秒ごとに冬に向かっていくのだろう。私には年末に歌われる様々な歌がそこで、急にいくつも思い浮かんだ。そして夜の日本は何故こんなにも平和なのだろうと思わされた。イギリスという国もヨーロッパの中では割合に犯罪の少ない国だと聞いた。私
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