ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
 
   11  そして、私は、……いや僕は、湖から生還した

 近くに大きな公園があって、僕は、夜中、いつも一人で出歩いていた。街路樹の木の葉が街灯の明かりに照らされている。緑色に。吹き付けてくる風が冷たかった。なんだか、雨雲が月の光を遮っている暗い夜だった。よろめきながら延命公園に入った僕は街灯の真下に設置されてある木のベンチに腰かけ、舗装された道を目で追った。レンガ道がずっと遠くまで続いている。すぐに、僕は斜め向かいのベンチの脇に髪の長い女性がしゃがみこんでいるのに気づいた。その女性との距離は5mほどしかなかった。彼女は頭を振り、髪を乱しながら、バケツの中に入っている何かを一心不乱に木の枝で
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