healcaのお客様へ/瑠王
男は94ページを読み終えると、時計を目にした。
7時23分。
昨晩から雨が続いている。
グリーンの縁の窓から臨む景色は、霧がかっている。
溜め息をついてはみたものの、こんな休暇も悪くはないかもしれないと思い直した。
これもシナリオのうちだ。
嘆いていては何をも楽しむことなどできない。
そんな風に物事を捉えるようになったのは父の影響だった。
「全ては書かれている」
決して裕福とは言えない環境で育った父の口癖だった。
成るべくして成ってしまった状況にもし打つ手がないのならば、シナリオ通りの反応をしてしまったら損ではないか。
何も役者になりきることはな
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