或る嘘つき女の生涯/木屋 亞万
 
勘違いしている人が多いのだが、「嘘つき」というのは本人の性格の悪さによるものではない。先天的なものもあれば、後天的なものもあるのだが、「嘘」に憑かれた人間が「嘘つき」になる。そもそも「嘘」というものは、常人の肉眼では見ることはできないものなのだが、ごく稀に「嘘」と対峙するものもいる。在る者は「目を魚のように泳がせてしまう水辺の生き物だった」というし、また在る者は「身軽にひょいひょい飛び回る鳥のような生き物だった」という。僕の伯母が言うには、「カワウソのような姿をした腹黒い獣」だという。
どの証言もなかなか信じられたものではないが、「嘘つき」の人間を見つけることは、「嘘」そのものを見るよりも実に容
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