マテバ、ウチヌカレル/虹村 凌
ティーンの頃のあいつの匂い、肌触り、温度、その融合した「それ」を知らずに生きている事が悔しくて仕方無い。あぁ、どうしたって悔やまれるあの夜。多分、僕は20代のあいつの匂いも、肌触りも、温度も、何も知らずに生き続けるのだろう。悔やんでも悔やみきれない二つの夜を引きずって生きて行くのか。
あいつを愛してる訳じゃない。愛なんかじゃない。ただ、あの時の僕を受け入れてくれたからこそ、いつまでも受け入れてもらえると甘えているのだろう。美しさに惹かれたのも事実だけれど、甘えたいのだ。深く、甘く、退廃的に、希望的に言えば、ナメクジの交尾の様に官能的に、絵の具の様に溶けてしまいたかったのだ。続きも、未来も必要
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)