夢/瀬崎 虎彦
秋の終わり、こんな夢を見た。
わたしは船の上にいる。船は霧に包まれる。朝なのか、夕なのか、それが分からないので朝霧とも夕霧ともいえない。海の霧だ。天候が悪くなれば、このように霧が立つこともあるのだろう。予定調和的に船は嵐に襲われる。嵐は襲うものであり、船は襲われるものだから。そのことをわたしはどこで体験したのか分からない。甲板にも人影はない。わたしの視線だけが、強い雨の吹きつける空中からのもののように錯覚する。語られることはすべて、中空から語られるものだから。わたしはいつしか島に流れ着き、ともに旅を続けてきた仲間たちの姿はすでにない。無事なのか、それとも海の藻屑と消え去ったのか、それを知るよ
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