夢/瀬崎 虎彦
 
るよすがはない。わたしは孤独であらねばならない。島には人が住んでいた形跡がある。それは人のものではなく神のものであった。神は人と同じ形をしている。神は自らに似せて人を作ったのだから。神は美しい女性の姿をしている。わたしは引き止められるが、故郷に向けて旅立たなければならないと言い張る。女神は悲しむが、わたしにはとどまる理由がない。とはいえ立ち去る理由もまた同様にない。わたしはそれからまた冒険を繰り返し、いつしか海原で美しい歌声を聞いたような気がする。ある秋の日に、風をはらんだ帆が湿り気を帯びはじめ、船は霧に包まれる。
 わたしが夢から覚めるまでにもういくらもない。
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