大学生活1/番田
僕らが住んでいるアパートは道を挟んだちょうど向かいにあり、よく晴れた日曜日の午後や暖かな春の夜には近くにある静かな公園に出かけたものだった。
ある日自転車で近くのダム湖に行くと、彼女はピンク色のスカートを履いてきていた。桟橋を渡っているとその色が湖の色と相まって、なんだかとてもまぶしく見えたのを覚えている。
「あの空はコバルトブルー、木の葉はイエローオーカー、幹はバーントシェンナ。」
僕はその色彩の名前は知らなかったし、カラー表の一体どのあたりの色を示しているのかさえ見当がつかなかった。
僕らは特にそこで喋る言葉もなく、彼女はベンチ座りながら色々なものを指さし、色の名前をささやいた
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