【140字小説】泣く女他/三州生桑
【催眠術師】
「…サテ次ハ催眠術デス。ドナタカ御協力ヲ…」私の恋人がハイと手を上げた。「オオ何ト美シイ方デセウ。ソレデハ、アナタガ一番美シイト思ッテヰルモノハ何デスカ?」口を開きかけた瞬間、彼女は一輪の紅い薔薇になってしまった。彼はその薔薇をタキシードの襟に挿し、にこやかに舞台を降りて行った。
【泣く女】
独り言を呟きながら若い女が近づいて来た。「絶対に許さない! 絶対に!」女は号泣してゐる。すれ違ふ時に私は少し笑ってしまった。余りに泣き顔が醜かったので。都会には色んな人がゐるなと思ひつつ、スタバでカフェオレを飲む。窓の外を見ると、さっきの女が泣きじゃくってゐた。私を指差しながら。
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