【140字小説】ふすま他/三州生桑
 
【小児病棟】
「僕死ぬんかなぁ」点滴パックを換へながら答へた。「いつかは皆死ぬわ」「看護婦さんはいつ死ぬの」「そのうちね」少年はため息をつく。「僕なぁ、妹殺してしもた」「えっ?」「喧嘩して、死んだらええと思てたら轢かれよってん。許してくれるやろか?」ナースコールが鳴り響き、私は病室を後にする。


【老人病棟】
日曜の朝の老人病棟は殺伐としてゐる。「ああもうナースコールを押さないで! 壊れるから!」夜勤明けの看護婦も気が立ってゐる。毎日誰かが見舞に来る人、入院して以来誰も来ない人。五分しか居ないのなら、いっそ行かない方がましかも知れない。「お婆ちゃん、具合はどう?」祖母はもう反応しない。
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