【140字小説】ふすま他/三州生桑
い。
【ふすま】
ふすまが少し開いてゐた。廊下の薄明かりがぼんやり見える。家族は皆眠ってゐる。犬も。布団の中から時計を見ると午前二時過ぎ。さっきより、またわづかに開いたのではないか? ラーメンに似た匂ひが漂ってくるや否や、ふすまは一気に開けられ、手足の細長い小太りな男が笑ひながら踊りかかってきた。
【首】
おい、首ッて何でクビッて言ふか知ってるか? ありゃな、首が曲がる時の感じなんだよ。爺さんの葬式でな、足が痺れちまってな、焼香の時にヨロヨロッと坊主の頭をはたいちまった。そん時にな、坊主の首がクビッと折れちまってよ。クビッとな。それで首だ。勉強になったろ。明日早いだろ。もう
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