【140字小説】裸婦他/三州生桑
【ラブレター】
「彼女とヨリが戻ったよ、有り難う!」「よかったわね!」「うん、君のアドバイス通り、手書きのラブレターを彼女に渡したら、もう大喜びでさ」それはあたしが欲しかったもの。「君のおかげだよ。お礼をしなくちゃ。何か欲しいものある?」ラブレターよ! あなたの書いた、あたし宛てのラブレター!!
【天国と地獄】
あるのはただ生きたいといふ本能だけだった。熱いといふ言葉も、恨みといふ感情も、まだ知る由もなかった。わづかな泣き声すらもう出なかった。車内の温度は五十℃を越えようとしてゐる。最期に思ひ浮かんだのは母乳のにじむ乳首だった……。母親はパチンコをしてゐた。冷房と興奮で鳥肌を立てなが
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